カエルチョコ・雪をなめるな

クリスマスにもらったカエルチョコを尻からすこしずつかじっている。いま1/3が過ぎたといったところだ。カエルチョコとはハリー・ポッターに出てくる魔法界のお菓子で、物語の中では箱を開けたとたん生きたカエルのごとく逃げてしまったりするが、わたしがもらったのは残念ながらマグル界の模造品、カエルをかたどっただけのチョコレートの塊である。しかもこれは型の関係でそうならざるをえなかったのだと思うが、カエルの顎がペリカンのように膨らんで角張っている。つまり製造でのカエル型はカップ状で、正姿勢からひっくり返してチョコレートを注ぎ、チョコレートの底面は平らになるというわけである。魔法もへったくれもない。マグルにはこれくらいで十分だろうという魔法使いたちの差別意識を感じる。実際、ハリー・ポッターの魔法界はマグル界を差別的に観察しているふしがあり、良心的な魔法使いはマグルとの混血を歓迎するものの、平時の言葉の節々に「マグルはなんにも知らない」「マグルのやっていることは面白くない」という態度が出てしまっている人がいるし、マグルに興味があるという魔法使いも、いわば昔の、ヨーロッパ的視線で研究する「未開の部族」に関する民俗学をやっているような姿勢なのである。

そういうわけで、マグルに与えられる模造カエルチョコは魔法界カエルチョコには遠く及ばず、しかし質がいまいちなら量でなんとかしようというつもりなのか、映画で見たのよりかなり大きい。わたしの拳大はある。顎は分厚過ぎて、これに歯を立てたら前歯が折れるだろうと思い、薄めの尻からかじっていくことにしたのだ。カエルは尻、後ろ足、下腹と、なまくらな歯でじわじわと削られ、醜い歯型をつけられているのに、ファニーな顎で動く気配もない。

 

今日は一日中家にいたので、雪が降るのをのんきに眺めていられた。この家で積雪を経験するのは初めてだ。去年はかなり寒くなって給湯器が凍り、びっくりしたが、雪は降らなかった。あるいはみぞれくらいでまったく積もらなかったのかも。

猫も雪が降っているのを見るのは初めてだろう。しかし、特に興味はないようだった。うっすら積もってやみ、夜になって外がぼんやり明るい感じがすると、長い時間、窓から外を眺めていたので、積もっている街の様子は不思議だったのかもしれない。

夫は出勤しており、いつもと同じように自転車で駅まで行ってしまったので、帰りは自転車は置いてバスにしたほうがいいよとLINEをしたのだが、駅前はここと様子が違っていてぜんぜん積もっていないように見えたらしく、自転車で帰ってきてしまい、走っている途中で周囲が雪景色になっていったためやばいと焦ったところでまんまと滑って転んだという。そんなに高低差があるわけでもないのに、どうもこの辺りは駅前よりすこし寒いし雪もよく積もるようである。車通りのあるところを走ってくるので、打ち身だけで済んでほんとうによかった。

そういえば近所のスーパーは雑貨はそんなに置いていないのに雪かき用スコップだけは売っていたし、凍結防止剤を家の前に撒いているおうちもあるようだ。わたしたちは雪国で暮らしたことがなく、この家に越してくるまで東京で賃貸暮らし、雪かきもまともにしたことがない。雪への心構えが甘いのだろう。しかし持ち家だったら、少なくとも自分の家の前あたりは雪をかいておかねば、翌日の朝、家の前が事故現場にもなりかねない。とりあえずちりとりで家のアプローチと前の道路だけはかいた。明日、誰も家の前で転んだり怪我したりしませんように。