人影

23時ごろ、家の窓から見える道に人影があった。

このあたりは住宅地だが駅から遠いので、夜はまったくと言っていいほど人通りがなく、時折通るのは明らかに家路を急ぐ人のみ。ご近所さんでもどこかへ行くのには車を使う人のほうが多いくらいの場所だ。

そんな場所なのに、人影は道の真ん中に佇んで、どっちに顔が向いているのかはわからないが、家を眺めているようだった。背はそんなに高くなさそうだ。

不意に動き出し、うちからは遠ざかっていく。わたしは丁字路の突き当たりから人影を見ており、その人物は丁の縦線を下に向かって歩いていくような格好だ。そちらは畑が広がっていて、住宅はやがて途切れる。街灯に照らされた後ろ姿は、白っぽい上着に黒いリュックを背負っているように見えた。すこし足がふらついている? 千鳥足でご帰宅途中の酔っ払いかもしれない。

彼(たぶん男だ)は畑へ抜けてしまう前に右の家へ入っていった。なんだやっぱりご近所さんか。

と思いきやまた道に出てきた。やめてほしい。なにしてんだこんなとこで。通報案件かも……と考えたが勇気が出ず、戸締りを確かめてわたしは部屋の奥にひっこんだ。

今、窓から離れてこの日記を書いているが、寝る前にもう一度確認してみようと思う。