電車で読書・街のロープウェイ・ライブのあやふやした感想

横浜のほうまで出向く。準備体操としてラジオ体操もやっておく。晴れて風が強い。

電車の中でユーディット・シャランスキー著 細井直子訳「失われたいくつかの物の目録」を読む。世界から失われたものに関する短編が集められていて、とても濃厚でなかなか読み進まない。落ち目になった女優の話(「青衣の少年」)が苦しくてたまらなかった。「彼女は自分のいちばん脂の乗った時期を空費した。」ううう、刺さる。これは勝手に自分に重ねているからだ。わたしは女優でもないし、そもそも脂が乗ってた時期なんてあったか? ない。全体的になにも乗らず、乗れきらずという感じだよ。と結論して苦しむのはやめた。

そのうち眠たくなって、いつのまにか頭が前に落ちていた。電車で本を読むと十中八九寝てしまう。尻が熱いのも不快だ。

 

桜木町駅(横浜の近接駅)に着くと、改札を出てすぐ、ロープウェイの乗り場がある。ロープウェイは山にあるものと思っていたので、すぐ海の、どこを見ても平地のこの場所にあるのは不思議な光景だ。しかもわたしは今の今までロープーウェイだと思っていたしそう発音していた。伸ばし棒が一本多かった。ロープのウェイ、縄道です。

ロープウェイは横浜の街を楽に観光できるという趣向らしい。たしかに桜木町駅前って、かなり太い車道が林立する現代的なビルを縦横に区切っているような街で、道を歩くのが楽しいという感じでもないから、上空から眺め渡したほうが気分がいいのかもしれない。べつに観光に来たわけではないのでロープウェイには乗らない。

 

今日はPerfumeのライブだ。

わたしはライブに一人で行く。まれに連れて行ってくれと言い出す人に出会い、何度かご一緒したこともあるが、ひとりでもふたりでもライブの楽しさは特に変わらなかったし、観終わったあとに感想戦をするタイプでも布教に励むタイプでもなく、よかったねえ、あの曲をやってくれて嬉しかったねえ、以上、解散!となるだけなので、わざわざ二人以上で行かずともと思う。そのライブのBlu-rayなどが出て、じっくり鑑賞したあと、あそこの演出がとか誰々のあの瞬間がとか話したいことが出てくるので、同じファンとカラオケボックスでのBlu-ray鑑賞会はやってみたい気がする。ともあれ、ライブ中は、なにがなにやらわからんがすごーい!きゃっきゃ!と飛んだり跳ねたりしているだけなので、意識がはっきりしていないも同然なのである。じっと観ている場面もあるにはあるのだが、のぼせたような気分で、集中しているというより、夢から自分の意思で出られないように、そこに釘付けにされて酩酊している感じだ。

 

今回のライブは客席をアリーナに作れないことを逆手にとった舞台だった。もしコロナが完全に収束したら、あの演出ではやらないしやれないだろう。Perfumeは新しいことも少しずつ取り入れ、変えないところと変えるところの選択眼とタイミングがすばらしいなといつも思う。えーっ、マジで⁉︎って思わせながら、いつものアレも残してくれる。

そして今回特有の舞台演出のせいなのか全体が今までないくらいにくっきり見え、自分の目が高精細のカメラになったような心地がしてすごかった。

アレとかソレとか歯切れが悪いが、まだ日程が残っていて、そのあいだは個別具体的なネタバレはワールドワイドウェブに流さないことというのがPerfumeライブの掟なので、こうなっている。

 

そういえば完全電子チケットだったのだけど、スマホQRコードを表示しながら顔の横にかかげ、用意されたデバイスiPadかな)に顔とQRコードを写す、という入場のしかたで、たぶん体温測定とチケットチェックを同時にやっているのだろう。ちょっとおもしろい光景だった。

 

帰りの電車は足元が寒い。