肉圧・紅白の楽しみ

一年間おつかれーの気持ちで、近所のステーキ屋に行った。チェーン店ではあるが、ふだんはステーキを外で食べるということもあまりないので、贅沢した感じがする。

チェーン店だからメニュー表は写真がふんだんに使われ、ページ表面がPP加工で、サイズも大きいものだが、めくった途端に隙間なくページにしきつめられた大きすぎる肉の写真がせまり、あまりの圧力に「ちかいちかい」と言いながら老眼のようにメニュー表を遠ざけて見た。メニューに載っている肉は実物より大きいのではないだろうか。紙が綴じてあるものをすべて本と呼ぶとしたら、今年読んだ本の中で、このメニュー表がインパクト、勢い、訴える力において最高であった。すごい本は油断しているときに不意に到来する。

 

テレビはほとんど見ないし日本のメジャー音楽全般に興味があるわけでもないのに、大晦日には毎年、紅白歌合戦を見ている。この一年、こんな曲や歌手が流行ったんですねえ、などといった新しい発見や、ごちゃごちゃした演出を楽しむ。

紅白でよくあるのが歌手が別の歌手のバックで踊るという演出だが、先ほどある演歌歌手が、他のバックダンサー役歌手たちが真面目に踊っている中、けん玉をしていておもしろかった。この演歌歌手はここ数年、舞台上でけん玉連続ギネスに挑戦しており、はっきり言って見ているほうとしてはハラハラしてまったく歌を聴いていられない。数年前はほんとうに失敗していて、テレビでは見たことのない雰囲気にホールが包まれていた。曲の中盤あたりで失敗してしまったが、けん玉失敗したから以降の歌はなし!というわけにもいかないし、歌手は頑張ってにこにこ歌い上げている。もうどういう気持ちで見ていたらいいかわからなくて困った。

今、紅白は前半が終わり、後半で今年のけん玉チャレンジが繰り広げられるそうだ。見届けましょう。

紅白でもっとも楽しみにしているのは実は終わったすぐ後にあり、紅白終了〜わ〜とやっているところでぶつりと静かになって、ゆく年くる年が始まる、その一瞬がいいのである。毎年、その切り替わりを、今年は何点だここがよかったイマイチだったなどと勝手にひとりで審査員をやっている。今年もやるだろう。