私淑される漫画・〆切を守ろう

わたしは前からTwitterで見かけていたので読んではいたものの、最近夫がたいへんハマったそうで、ちいかわの新しいの読んだ?とよく聞かれる。それどころか、日常生活にちいかわっぽい話しかた(今調べたらちいかわ構文と呼ばれる言い回しがあるんだな)を導入してきて、わたしにも移ってきた。主にヤハやウラを使ってしまう。ヤハはなんか嬉しいとき、ウラは「見て」みたいなときである。さらにちいかわとハチワレみたいに暮らせたらいいよね、みたいな話までしていて、こうなると完全に私淑だ。ハチワレはちいかわに優しいし、ちいかわもハチワレを喜ばせたり役に立ったりしたくて奮闘していて、なかよしだなあと嬉しくなるから、ふたりが幸せでいてくれますように、辛いことがありませんように、と祈る気持ちが湧いてくる。夫婦でそういう気持ちをずっと持てたらいい結婚生活だろう。

さんざん語られているのだろうけど、ほのぼの系、邪気がない、あるいはそう見せかけてかなり裏がある、といった、従来あるかわいいキャラクターもの漫画から、さらにずらしている感じ、わざと気持ちよくまとめない感じが癖になる。はじめて読んだときはその新しさゆえか、ちょっと読みにくい漫画だな、意味がわかんないかも?と思うところもあって、しかし何作か読んでいると噛み心地がおもしろくて次々読んでしまう。

 

Netflixでふと、「ネクスト・イン・ファッション」というリアリティ番組を見始めた。賞金25万ドルをかけて、テーマに沿った服を作り競争するというもので、出場しているのはキャリアはあるが世界的に有名というほどではないファッションデザイナーたちである。たった一日(といってもおそらくスタジオにいられる半日くらいのものだろう)プラス5時間くらいで服を一着、二着、作る。テキスタイルのプリントからやる回やスーツを仕立てる回もあり、これを一日と5時間で作り上げられるものなのかと毎回信じられない気持ちだ。わたしは家庭科や一般に売られている作り方本を見てしか服を縫ったことがないので、プロたちが型紙はおこすものの、トルソーに着せながら細部を決めていくらしいことに驚いた。翌日、モデルが到着してフィッティングしながらさらに細部の調整をする。ここで大幅にサイズが合わないなどというハプニングが生じることもあり、見ているだけで冷や汗が出る。ランウェイスタートまで残り数分なのに、なにかしら作業をしている人もいる。こ、怖いよう。

卒業制作で、最後のデータ作りに予想外に手間取って、データの提出形式を間違えてやり直しになり、結局、最終提出時間をすぎてしまって点を下げられた、自分のサイテーな思い出が蘇る。そのときわたしは大学のPC室で、周りの同級生たちが悲鳴を上げながらデータ作りをしている中、みょうに落ち着いて作業していた。周囲からはもう提出し終えて余裕をかましているのだと思われていたが、そうではなく、焦りが極限に達するとスッと無になってしまう質なのだった。

なにがあっても締め切りには間に合う、そこがプロだよなあという感じもする。出版の世界ではプロなのに締め切りを大胆に裏切ったり、誌上に穴を開けたり、逃亡したりという話を昔からよく聞く。どれも有名な人だったりするから、いいものを書(描)く人かすでに大衆に支持されている人しか締め切り破りは許されず、凡百の書(描)き手なのに遅れるやつは淘汰されていくのかもしれない。締め切り間際になってもパニックを恐れず、おおいに慌て、そして最後にはちゃんと落とし前がつく、そのような人にわたしもなりたい。