溶かす善行・洗濯機との和解

昨日のこと、家の前の道路は陽当たりが悪く、アイスバーンになったままで、いつか車が我が家につっこんでくるのではないかと恐ろしくなったため、いまさらかとは思いつつ、融雪剤を買いに行く。

完全に凍っちゃったあとではなく、雪をかいてすぐに翌朝凍らないよう撒いておくものと思っていたが、氷の上から撒いてもすぐに溶け出し、嬉しくなって二度撒いた。半日ですべて溶けて、今朝見てみるとただの水シミになっており、これでスリップに怯える運転手を幾人か救ったであろうと我が善行に満足した。また雪が降ったら前もって撒いておこう。

 

隣室で床に座っていると、尻にまで感じる振動を発生させる我が家のF◯ckin' 洗濯機による揺れを少しでも軽減しようと、新しく買った台座や免振ゴムを下に敷いた。敷いたと三文字で書けるがたいへんな苦労の末の「敷いた」である。あーなんとかかんとか敷けましたやれやれ、くらいの「敷いた」である。

まず洗濯機は車輪つきの台(枠状)に乗っていたので、いったん持ち上げ、持ちあがってる隙に車輪つき台をどかしておろさなくてはならない。そして新しい台座(四本の足ひとつずつに敷く形式)を洗濯機がもとあった場所に据えつけ、乗せなおす。

ドラム式洗濯機というものは縦型洗濯機よりだんぜん重いのである。100kgはある。ところがうちは二人家族、猫もトカゲも重いものを持つのには向いていないし、すぐ来てくれるような友人も思いあたらない。夫が二人ならば持ち上げられるだろうが(洗濯機を運んでくれたのも筋力のありそうな二人だった)、わたしは重量をあげるとすぐ腰を痛める。たぶん身体の使い方が下手なのだろう。

そこでAmazonで買ったのが、肩と荷物の下に巻いて持ち上げるベルトである。これで人によるが、二人で200kgまでいけるという。半信半疑ながら、たしかに腰への負担は軽減できそうだし、とりあえず試してみることになった。

夫はたしかに楽ちん!と感動していたが、さすがのベルトも身体の使い方の下手さまではカバーできないらしく、洗濯機をはさんでこちら側のわたしにはどうもうまく持ち上がらない。ふんばるが、腰に怪しい伸張を感じて諦めるのを数回くりかえした。膝を曲げて、胸ははって、すこし後ろに反るような気持ちで立つんだ!と指導してくれるのだけど、どうしても背中は丸まり、膝が洗濯機に当たってまっすぐ上に立てず、腰にばかり重量がかかってしまう。エア持ち上げで動きのリハーサルをし、夫が筋トレでバーベルを上げるときに使っている腰を補助する用の皮のベルトを巻き、荷物上げ用ベルトの長さも調節し、ようやく持ちあがった。どうがんばってもわたしでは手で持ってなんとかなるような重さではないので、ベルトは買って正解であった。

持ち上げられたら、車輪つきの台をそのまま足で蹴って、脱衣所の空いているスペースに滑らせ、下が空いたら洗濯機は一旦おろす、という作戦であった。ところが持ち上げるので精一杯だったわたしは、台の車輪ふたつの間に片足を置いてしまっており、台を蹴ったとたん車輪に爪先を打撃されて悶絶した。一瞬、洗濯機を足の上に落としたのかとひやりとした。爪先骨折救急車……とリズミカルに単語を思い浮かべてしまう。顔に血が上り、足をFu◯kin' 洗濯機に押しつぶされる恐怖で力がうまく入らなくなってよろめき、踏んばって静止だけはしたが、洗濯機のほうは傾いて端っこが台に引っかかっているようだ。

しかし夫は余裕があったようで、わたしが力を抜いても平気だった。自分の足を避け、洗濯機をあらためて少し上げ、なんとか台をどけられた。爪先も落ちついて見ればそんなにひどい打撲ではない。すでに痛くないし、腫れそうでもない。

そのあとは夫が洗濯機を傾けて片側の足だけを浮かせているあいだにわたしが毛布を滑り込ませ、押して所定の位置に移動、おなじように一足ずつ免振ゴムと台座を入れていって、整えた。

さて、肝心の揺れはどうかというと、ずいぶん軽減されて万々歳である。これまでは木造家屋自体の骨組みが、洗濯機の振動でだんだんイカれるのではという不安にかられるほどだったが、今はこれくらいなら大丈夫そうと思える。家へのダメージに怯えて洗濯を一週間保留にしていたため、洗濯物はさんざん溜まっている。下着を換えられない危機に瀕しており、瀬戸際での持ちなおしであった。

洗濯機との和解はわずかに進んだといえよう。