手入れ・すけそうだらソーセージ・くさい

ふと爪を見たらボロボロだった。

わたしは手が大きく指も長めなので遠目で見るときれいな手とお褒めいただけるが、大人になっても爪を噛む癖が抜けなくて、爪の形が歪である。常に噛んでいたり人前で噛んでいたりはしないので、痛々しいほど深爪というわけではない。伸びたなというタイミングで、なにかちょっとしたストレスがあると、爪切りの代わりに噛んでいってペッとする(子供の頃は爪を飲み込んでしまっていたが、大人になってから吐き出すようにはなった)。

治したくてネイルポリッシュを塗っていた時期もあった。メイクして鏡を見なくても目に入り、かわいい!と嬉しくなるのは爪だけなので、それがよくて続けられていた数年があり、治ったかと思っていたが、実は直近で二回くらいは噛んで爪切りを済ましてしまっている。それに加え数年前よりも、確実に爪が乾燥するようになっている。歳を重ねた人の爪の風格が多少出てきていて、それに噛みちぎったギザギザの断面を合わせるとみすぼらしく見えるのだ。

ネイルサロンに通えるようなお金はなく、安いネイルポリッシュしか買えなくても、あるいはたとえネイルまで塗れなくても、爪切りで爪を切って角のないように整えられる、というその手入れだけで、爪が目に入っても気にならないくらいの精神的充足はあった。精神的充足! そんな大袈裟な言葉を使うようなことか? いいえ、本当にそうなんです。ささやかなことがもっとも大きい充足であり、ハードルなんです。

これは服もそうで、わたしはシーズンごとにコレクションを全体的にチェックして、フォルダにスクリーンショットを貯めておくくらいにはハイブランドの服が好きだけれど、買えたことは一度もなく、しかし量産品の服でも、新しかったり手入れができていたりすれば普通にしていられる。ところが毛玉がたくさんついていたり明らかに黄ばんでいたりするのをそのまま着ていると気づいた時には、とても惨めだ。

美しくするための手入れがどうこうの前に、最低限の「自分を惨めに思わない」レベルの手入れがあり、年齢が進むにつれ、後者の手入れに時間やお金がかかるようになった気がする。気を確かに保っていないと、後者の手入れですらあっという間に疎かになる。気を確かにするために医療に頼り、薬を飲むことだって稀ではない。

外へ出て、自分より明らかに年上だと思われる人々がそのへんしっかり納めているのを見ると、尊敬の念が湧くようになった。それこそ十代、二十代前半くらいまでは、四十代以上くらいの人々の多くが服やメイクにおいて美しさや格好よさに注力していないように見えることが不満であり、疑問であったが、ルッキズムの奴隷になっている愚かさは幼さゆえと許すとしても、見るべきは爪の先だったのだ。きっと多くの大人たちが爪切りで切った爪をしており、自分で自分の手入れをできている身体で、わたしの目の前にいたというのに。

大人になって、気を確かに保つ。たいへん大きな目標です。

 

すけそうだらソーセージという魚肉ソーセージの眷属のような商品が、四本で98円と安くなっていて、興味本位で買った。色がグレーっぽかったので、おでんのイワシつみれみたいなのかと思って食べたら完全にかまぼこであり、予想外のおいしさだった。賞味期限が近いからということで安売りされていたようだ。買い占めてしまえばよかったな。

ギョニソの袋にも描いてあった気がするが、ソーセージをピッタリ覆っているフィルムを剥がす手順を描いたテクニカルイラストレーション、よい。これはイラストだけ切り取ってもなんなのかわからなくならないタイプ。

 

隣家の人のタバコの匂いに悩まされている。

わたしは家にいるとき窓を開けはなしておくのが好きで、隣人はよく玄関先やベランダに出てタバコを吸うため、匂いが窓から部屋に入ってきてしまう。よく入ってくるのが寝室であり、いちばんタバコ臭さを染みつかせたくない場所なのでまいっている。ベランダもちょうど高さが揃っていて隣同士になっており、うちが洗濯物を干す場所の真横なので、うっかり干している間に吸われると洗い直しである。

隣人もたぶん持ち家だと思うが、家族に外で吸ってくれって言われているのだろう。家でなにかしているときに外で一服したくなるけど、喫煙所がすぐにあるような場所でもないし、とりあえず外だけど家の敷地内で吸っている、とか。家にいる時間が不規則なようで、いつ吸うかも読めない。

思いきってやめてくれと頼みたいが、勇気の出ないまま一年半経ってしまった。

前に住んでいたアパートで、下階の住人もタバコを吸う人だった。しかしたぶん外に完全に出て吸っているわけではなく、家の窓を開けて外へ吐き出すくらいのもので、それくらいだと上階のうちの洗濯物にはあまり被害がなかった。それとも今の隣人のタバコが特別よく匂う種類なのだろうか。そんなことある?

持ち家はこういうの面倒くさい。隣人に不満があったら自分で交渉しにいくしかないのだ。トラブルは避けたいし、口うるさくないよき隣人としてふるまいたいなんていう欲もあるし。