洗濯機の現実

ドラム式洗濯機に苦心している。

乾燥の容量は6kgまでとあるが、いくら入れる量を少なくしても乾いていない部分ができ、洗濯乾燥が終わったら可及的速やかに干してやらないと、馬鹿にしてんのかというくらい臭くなる。縦型洗濯機で洗い終わった洗濯物を、うっかり二時間くらい放置してしまったことはたくさんあるが、それでも別に臭くはならなかったので、ドラム式洗濯機で時短とか家事楽とかよく言われているけどまるっきり嘘じゃねえか! と地団駄を踏んだ。UV除菌というものがついており、これが妙な生臭ささ(オゾン臭?)を放つ。完全に乾けば洗濯物自体からは匂いが抜けるものの、槽内と脱衣所には常にその匂いが漂っているのもだいぶつらい。しょうがないから換気につぐ換気で、脱衣所が寒い。寒い脱衣所で服を脱ぐ。熱い風呂に入る。ヒートショックまっしぐら!

洗濯乾燥をセットして出かけるなんてことをしたら、帰ってきたときにはシワシワでほんのり暖かくて一部分が湿った臭い衣類やタオルができあがっているであろう。期待していたのと全然ちがう。理想では出かける直前に洗濯機を回して、帰宅後即、風呂に入り、乾燥まで終わったタオルを洗濯機から取り出してそのまま風呂上がりの体を拭き、下着も同じように取り出して履くくらいのズボラさだったのに程遠い。

さらに、乾燥にかけたタオルは縦型洗濯機で洗って干したものより確かに柔らかだが、乾燥をつけずに脱水までで普通に干してみると、縦型洗濯機より硬くミシミシに仕上がってしまう。柔軟剤を入れること前提なのだろうか。使いたくないのよぉ、柔軟剤をさぁ。

ドラム式洗濯機にかける期待が高すぎたのだ。楽になった楽になったとYouTubeやらなんやらで聞くので、自分ももれなく楽になれるだろうとたかを括って洗濯機それぞれの具体的な使い心地を調べず買ったのが悪い。わたしは縦型洗濯機のときから色柄物を別にするとか柔軟剤を入れるとか七面倒くさいことはすべて避け、ある程度たまったら入るだけ洗濯機にドーンと入れ、上からザーッと粉洗剤を撒き、匂いの心配があるときはテキトーに重曹と酸素系漂白剤を追加し、タオルは干すときにがむしゃらに振ってある程度パイルを起こしまあまあのふわふわを保つ、という方法でやってきたので、これ以上、洗濯に関して楽になりようがなかったのだと思われる。

まだ終わらない。新たに厄介なのが、洗濯機の振動である。

縦型洗濯機より音は静かなのに、振動がものすごい。隣室で座っていると尻に響いてくる。最近なにやら地震が多いので、洗濯機で揺れているのかまた地震が来たのか、刹那わからずペンダントライトなどを確かめてしまう。

これは洗濯機としてもしかしたらやってほしくないことなのかもしれないが、うちは洗濯パンの代わりに、下に車輪のついた台をかませてあって、普段はジャッキで車輪が上がっており、洗濯機の下や裏を掃除したいときに車輪を下ろし移動できるようになっている。これが洗濯機の動作中にしょっちゅう、すこし前へ進み出てくる。振動でジャッキが緩みやすいとかいろいろ理由があるのだろう。縦型洗濯機よりずいぶんと重いので、ジャッキを上げ下げするのにかなり力が必要で、いちいち直すのも骨が折れる。

元々はベランダに干すと隣人が外で吸うタバコの匂いがついてしまうのが嫌で、ドラム式洗濯機にして室内で全部乾燥だ! というつもりで買ったのに、今度は生乾きだUV除菌の奇怪な匂いだ振動だお手入れだと、全体としては手間を上乗せされた感じがある。そのうえ高価。

高価な衣類、宝飾品、道具、食器などなど高価なものは特別な手入れを必要とする。高価なりのよさを保つためには、報いるだけの時間と手間が必要だ。家電もそういう類だとは思っていなかったのだけど(むしろ逆だと思っていた)、認識を改めねばならない。夫と結婚したころから使っている家電はほとんどが最安値のものだったので、12年経ってこれから買い換えもあると思うが今より楽をしようとは考えないほうがよさそうだ。金をかければ家事が楽になるというのは、人間の手間を買える(つまりハウスクリーニングを雇ったり)だけの金が出せる場合に言うのでしょう。世知辛いねえ。