鳩サブレー・ベランダ・不便の受容

大量の鳩サブレーが家にある。

ここ数年、わたしの誕生日に親からプレゼントとして大容量缶入り鳩サブレーが送られてくるため、夏から秋にかけては毎日のように食べている。

鳩サブレーは鎌倉土産の定番だが、シンプルでいつ食べてもおいしい。いろんな味を作らないところも好きだ。形もかわいいし、豊島屋(鳩サブレーの店の屋号)本店でしか買えない鳩サブレーグッズも素晴らしいし、豊島屋自身が鳩サブレー愛がものすごいためサブレーが割れないようにする緩衝材にすら鳩サブレーの造形をあしらっている。

とにかく、毎日おいしいので幸せ度が上がっている。

 

朝顔とゴーヤでグリーンカーテンをしているベランダが落葉や流れた土で汚れきっているので、とりあえず掃いた。

ベランダに箒を置いているものの、ちりとりは外のガレージにしかない。家の中でもっとも遠いふたつの場所にセットで使うものがそれぞれ置いてあるとは、なんとUIの低い家であろう。

取りにいくのが面倒くさいので、集めたゴミは手で拾って袋につめた。

ベランダ専用の簡単なちりとりを買おうとこの家に越したときから思っているが、思いながら買わずに一年半が経った。ホームセンターへ行くたび、買い忘れて帰ってきてしまう。

こういうことがわたしには多い。しようと思いながら年単位でしていないことが。

例えば金継ぎである。

金継ぎしようと捨てていない食器が五、六個はある。麺類を食べるどんぶりなどは口がわずかに欠け、しかし別のを買うとかさばって嫌なので欠けたまま使っている。欠けたところに唇をつけないよう注意して食べる。

レンゲは柄がボッキリ折れたので使えずしまっておいているが、新しく買うのは折れたレンゲに義理立てできない気がして、坦々麺などスープから細かい具をすくいあげる必要のある食べ物のときは箸でかき込む。またはもう普通のスプーンを使っちゃう。

金継ぎ予定の食器はひとまとめに包まれて、何年も台所の戸棚の奥にいる。

さらに例えば、コーヒーテーブルの塗装である。

古い文机をコーヒーテーブルにしていて、塗装がずいぶん禿げてしまったので一度サンダーで塗装を全部剥がし、塗り直そうと思っている。

こちらはガレージに運び、広い面は剥がしおえたが、手作業で頑張るしかなさそうな細かい部分になかなか進めないまま、三ヶ月は放置している。湿気の多いガレージで梅雨と夏を越してしまい、カビが生えてないかおそるおそる見にいったところ、立てかけたテーブルと壁の間に脚がみょうに長く頼りない蜘蛛が巣をはっていた。カビはなさそうだったので、作業は再開せぬまま、テーブルを縦立てかけから横立てかけに変えただけで戻ってきた。

コーヒーテーブルがないとソファーでお茶を飲んだりする時に不便だが、スツールをサイドテーブルがわりにしてしのいでいる。むしろソファー前が広々としていいかもしれない。

わたしはなんらかの不便を解決しないまま、自分を不便に添わせるようにして生きている。