クチコミ・いい風呂

起き抜けでもう気分が最悪だったため、そのまま枕元にあったスマホを取り上げ、勢いよく近所の婦人科を検索、予約した。しかし初診の予約は年内はいっぱいで、年明けにするしかなかった。12月のPMSはまた辛抱しなくてはならない。それでも予約しただけでつらさの三割は軽減したようなもの、あとは予定を忘れなければきっと楽になれるだろう。はやく楽になりたい。

予約してから気づいたが、もうすこし遠い他の婦人科はとくに予約も必要なく、自由に来てくださいという感じである。明日行って明日楽になれる可能性もあるのだ。

ここまで差がつくのは、おそらくグーグルのクチコミや星の数のせいなのだろう。星の平均値が高いところは総じてweb予約が必要で、かなり先まで埋まっており、予約のいっさい必要ないところは星の平均値が低くて、低評価なクチコミが多い。産科もあるところだと、かなり具体的に嫌な目にあった旨が書きつづられている。あんまりクチコミを信用していなかったのだが、病院となるとみな切実なので嘘っぽいとか捨てゼリフ気味とかいうコメントはほとんどなく、信憑性がありそうに感じてしまう。実際、商店なんかであれば、とりあえず行ってみてやっぱりだめだったとなってもすぐ諦めがつくが、病院でへんな対応をされてしまうと(産科だったら特に、出産までここと決めて通わなければならないのだろうし)心底後悔しそうだ。

反対に、もしこれらのクチコミが悪意ある人たちによりひどく、あるいは根拠のないことを書かれていたとしたら、病院自体の存続の危機にもなりそうだ。それでも自分を実験台にして、あえてクチコミの悪い病院に行ってみるほど、わたしは孤高に生きられない。どこの誰かわからないクチコミをとりあえず信じ、星の多い婦人科を選んでしまった。

もしわたしがなにか店を構え、商売をやったとして、グーグルにいつの間にか身に覚えのない悪いクチコミを書かれていたら、そうとう腹が立つだろう。ミスを盛られて書かれても自分を棚に上げてムカつきそうだ。書かれていることは事実でも、えっそれで星ふたつなの? といった納得できない評価をされただけでキレそうだ。そしてすべてのグーグルのクチコミは信じないと、高らかに宣言するだろう。クチコミの悪い病院であっても、診療内容をサイトなどで見るだけで、行くかどうか決める。立場が変わると見えるものも感じることも違い、日々の小さな選択もすこしずつ異なり、そして最後にはそれぞれの思いの及ばない遠さのある人生ができあがる。

こんなに沸点が低いのは、ぜんぶPMSのせい。PMSでなければ、「腹が立つ」「ムカつく」「キレそう」が「悲しい」「つらい」「釈然としない」くらいに落ち着く。はやく年が明けて楽になれますように。

 

今日はいい風呂(1126)の日なので、風呂に二回入る。

一回目は午前九時ごろ。二回目(予定)は午後十一時ごろとする。

一回目に入る前、坐骨神経痛が生じていて右尻の下が痛いくらい痺れていたのだけど、温めたらわずかによくなった。それでも完全に取れず、尻の下にゴムでも食いこんでいるような妙な感覚がある。

バーダックも浮かべた。ラバーダックは今どこにいるでしょうゲームを一人で開催する。湯に浸かり、波立ちがおさまったあとでラバーダックを浴槽の中心あたりに浮かべ、目を閉じて三十秒数え、浴槽のどのあたりに移動したか予想してから目を開ける。予想外に眼前にいたりすると、けっこう楽しい。そっぽを向いていちばん遠いところへ行ってしまっていると、離別のような切なさが一瞬浮かび、すぐ消えていく。

そういえばインテリアデザイナーのテレンス・コンランによる「PLAIN SIMPLE USEFUL」というインテリアの勘所をまとめた本では、全体的に上質でシンプルな美しいもので部屋を作っているが、バスルームの写真には遊び心のようにラバーダックがいる。そしてテレンス・コンランはイギリスの人である。やはりラバーダックはイギリス産なのかもしれない。