つかえ・おなじみの

キッチンの排水口を掃除していて奥をのぞくと、見慣れない白い糸のようなものが、ちょうど管の内径に橋を渡すようにして引っかかっている。すぐ上の明かりをつけてよく見ると、どうやら魚の骨だ。網の目をかいくぐったはいいものの、水流で真横になってしまい、そこからにっちもさっちも行かなくなったらしい。真上から水を流してみても流れていかないし、指をつっこんで取れる距離でもない。パイプユニッシュを注ぎ入れたが骨は溶けなそうだ。わざわざ割り箸を出してくるのも面倒くさい。まあいいかこのままで。

 

毎月おなじみPMSのお時間です。

イライラして口が悪くなる、なかなか物事に手がつけられず夜更かしぎみになる、食欲が増す、意外なところでは綺麗好きになってというかアラがよく見えるようになって、排水口やカビ取りの掃除を始めることがある、などが主な症状だ。

日記の口調もものごとの見方も荒んでいる。調子のいいときに読み返すと、我ながらかわいそうになってしまう。

TwitterPMSがひどいと呟くと、優しいフォロワーが病院をすすめてくれる。そうだよねえ、行ったほうがいいよねえ、この生理終わったら行くぞ、今度こそ!と毎月決意を新たにするが、抜けるとPMSのつらさも大したことない気になって、結局行き損ね、またPMSを迎えてひとりで呻く。もしやつらいとき真っ只中で行くのがいいのか。いやそのときはそのときで、動きたくもないのだ。「具合がよくなったから病院に来ました」である。病院の待合室でご近所さんと歓談する老人である。なるほどこういうかんじか……。

PMSを迎えると、それ以前の20日くらいで確立したいいかんじの生活・制作・勉強ルーティンがぜんぶ無になり、終わったらまた思い出しながらすこし戻って始めなくてはならない。おお、これだけでもおおいなる時間の浪費!

せめて睡眠をしよう。歯を磨こう。Twitterは閉じ、スマホはタイムロックコンテナに閉じ込め、その隙に目をつぶろう。